参ったな - 自分の小さな「箱」から脱出する方法 -


人とぶつかった時、機嫌の悪い相手をなだめる時というのはなかなか思い通りにいかないものです。相手を気遣うような事をしても言っても、丸めこもうとしているように取られてしまうと余り効果はありませんし、内心めんどくさいという気持ちがどこかにあった場合はやっぱり自分の方にも丸めこもうという気持ちがどこかににじみ出てしまいます。
わだかまりの生じる人間関係において、当人同士が考えるのはだいたい「どうしてあいつはこうなんだろう」。そう、自分ではなく相手に原因を求めてしまうのです。簡単に言えば自己正当化。これにより、人を歪みのない目で見ることができなくなります。
と、ここまでならまあ普通に誰もが知っていてそれほど新規性のない話なのですが、本書はあと一歩先に行きます。それは、次の疑問を読者に投げかけることから始まります。

「では、なぜ自己正当化が生まれるのだろうか?」

このシンプルな疑問に対して、本書はページの半分以上を使い答えていきます。あなたはなぜだと思いますか?
本書の答えを短くまとめると、自分が良心に従ってするべきだと一瞬でも思ったことを結局やらなかった時、自分の期待に自分で裏切った時に、自己正当化の視点を持ってしまうということになります。
この部分のロジックが非常に面白い。本書は「自分を裏切った」時の人間の心理状態の変化を、読者に納得のいく形で展開していきます。それこそなんだかだまされているんじゃなかろーかと思うくらい、すんなりと。
そして、自己正当化が始まると相手を人としてではなく物として見てしまい、本当に相手のことを考えられなくなってきます。逆に、相手を人間として尊重し、相手に心からの関心を持つことで、物事は意外と上手く回っていくことが多いのですよ、と。
いわゆる「人に変わってもらおうと思う前に自分が変わりなさい」という話ですね。とはいえどう客観的にみても許せない人間というのは存在するわけで、その人たちとはどう付き合っていけばいいのか、ということに対しても、様々な小説風のお話の中で持論を展開しています。
そして「箱に入った」状態の人が沢山いる中で仕事をすると、業績を上げるという本来の目的とは異なる方向にエネルギーを注ぎ始め、会社としてはあまり良くない状態になってしまうのだ、ということです。
言いたいことはシンプルで、でも読みあげるのに結構時間はかかりました。人生のシンプルな原則を伝えるのに短い言葉ではなかなか伝わらないこともあり、そういう時の為に昔から様々な道徳的な小話や小説がつくられたのだと思います。その視点から言うと、本書の長さは必要なものだったのだろうなと。長いといっても2,3時間で読み終わりますけどね、一見してポイントが分からないので飛ばさずに読むのでそれで時間がかかる、という。でも読者の心にしみこむにはこれくらいの時間が必要かな、と思うのでした。

マインドマップはこちら。

自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分を振り返って

自分の職場で上手くいかない人間関係についてちょっと考えてみました。そしてこの原則が自分達に適用できるのだろうか、と。ここに詳しくは書きませんが色々考えました。色々と言ったら漠然としてますが、マインドマップのノード数で数十ノード程度。そうすると最初考えていたのとちょっと違う側面が見えてきたのでした。
なかなか良い結論は出ませんが、あせらずお互いのことを色々考えていくという過程でお互いの気持ちを考えることが出来るようになるかな、と思いました。少なくとも昔みたいに「なんだかあいつは非協力的だ、こっちは忙しい中頑張っているのに」という気持ちを表に出さないようにはなれそうかな。
ひたすら実践を続けることで、いつの間にかそういう気づかいが身につけばいいなあ。