灰色の男にも鏡の国にも負けないために - モモ

こんなところで座りながら読んでました。

「モモ」という本を読みました。「はてしない物語*1の作者、ミヒャエル・エンデ作の童話です。あらずじはこんな感じ。
平和な町がありましたが、そこにいつの間にか灰色の男達がやってきます。彼らの陰謀によって町の人々は時間の節約に走るようになり、みなが心に余裕を無くして不幸せになっていきます。物質的には豊かになるものの、笑顔が減って、イライラが増えて、自分たちでもこれがよくないことだって気づいてはいるのだけれど、もとの牧歌的な生活に戻るのは怖くてもうできない。こんな中、一人の女の子「モモ」が立ち上がり、灰色の男達に抵抗します。そんなお話です。
童話だからといって馬鹿にしちゃあいけません。amazonの書評でもありましたが、大人になってからこそ読んで心に響く本でもあります。私も例外ではありませんでした。
身の丈に合った人生の楽しみ方を身につけられるかどうかが、幸せというものの基準の一つなのだろうな、とありきたりなことを思う一方、走り続けなければ置いてかれてしまう鏡の国*2の様な世界に僕たちは生きているという現実からも目をそらすわけにはいきません。
灰色の男たちが引き起こす問題の本質は、時間を節約することそのものではなく、節約した結果として心を失い、心が貧しくなってしまうことだということです。この問題において「時間」を「お金」に置き換えたとしてみましょう。お金を節約したからといって必ずしも心を失い、心が貧しくなるわけではありませんよね。つまり、時間の節約にもやり方、心構えが大切なのではないか、このせわしない現代で時間を大切に使うことを意識しながらも心豊かに生きる方法もあるのではないか、と私は思うわけです。
その方法、心構えとは何でしょうか?私の考える答えの一つは、「何のために節約するの?」という問いを自分に問いかけ続けることだと思います。目標の無い節約は、言い換えれば限度の無い節約です。限度が無いと、満足することは決してなく、常に飢餓感に苛まされます。自分が心から納得できる価値観に従って行動することができれば、その結果に対して自分で責任を持つことができるはずです。
色々考えを膨らませてしまいましたが決して堅苦しい話ではなく、作者のあふれんばかりの想像力で彩られた素敵なお話ですので、それこそこれを読むために他の時間を少しばかり節約してもいいのではないでしょうか。効率的に人生を過ごしたいな、と切望している人とか、自分は今効率的に人生を過ごせている!!と満足しちゃっている人はだまされたと思って一度読んでみて下さい。ちまたのハウツー本10冊読んでも決して分らないことが、ここには語られています。

この本を読んでほかに浮かんだ想念とか

  • 目の前の一つ一つに心をこめていれば、きっとそれは楽しくなる。
  • 音楽を消してテレビも消してこの本に集中してみた。すごい楽しくなった。
  • 身の丈に合った娯楽を、楽しみ方を自分で考える時間の使い方を。

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))

*1:未読です。

*2:これも未読です。知ったかぶりです。