情熱と共に生きた人


マリー・ローランサン、知ってますか?20世紀前半、ピカソと同時代の女流画家です。この前天保山サントリーミュージアムでこの人の展示をやってから名前を覚えており、図書館で伝記を見かけたのも何かの縁かと思い借りてみました。私の固い文章では非常に表現しづらい人柄で、

静かなひと時、一杯のお茶を飲む嬉しさ、その快楽。もうひとつの楽しみは、私をバンティングに連れて行ってくれる三十九番のバス

こんな風な文章で語る人(バンティングって何かしらないけれど、そんなことは関係ない)。伝記を読むに、とても情熱的で自分に正直に生き抜いた女性の様です。
この人は短いながらも多数の手紙を出すのが習慣だったらしく、その手紙が残っていることから本人の思考を時を超えて知ることができ、それが彼女の伝記の魅力に多大な貢献をしています。
本書を読むことで、フランスの芸術家というものはこういうものなのだな、というのがいい意味でわかったような気がします。芸術や文学ってのは作者や時代背景を知ることで作品鑑賞に深みを帯びていくのだろうな。
結婚はしなかったものの最も深く愛していたであろうギョーム・アポリネール、彼からの手紙の束と共に埋葬されるシーンが淡泊に描写されて本書は終わりますが、このシーンにはとても胸打たれます。深いなあ。久しぶりにゆっくりと本を読みました。至福の時間をありがとう。

マリー・ローランサン

マリー・ローランサン

長野県に美術館があるのね。いつか行ってみたいな。
http://greencab.co.jp/laurencin/exhibition/new/newex200803.html