同時代性という概念 - DoGA CGアニメコンテストにて

「新しい水は絶えず沸き続ける」外に流れていくのはどんな水?

日が変わる前にこのエントリを書きたかったので眠いのを我慢して書きます。
今日は淀屋橋の中央公会堂でPROJECT TEAM DoGAによりCGアニメコンテストが開催されました。個人の時間と機材を使った自主制作CGアニメの発表の場です。毎年この時期に東京と大阪で一回ずつ開催されます。

(ちょっと思い出話)
私は10年前にこのイベントでとあるダークサイド作品(MADムービー)を発表したことがあります。LightWaveというCGソフトを使って適当にキャラクタを作って動かしているだけだった私に、縁あってかまたさんやDoGAスタッフのメンバーは真剣に付き合って話をしてくださり、こうすれば面白くなるんじゃないか、あーだこーだと私の作品製作にコミットしてくださいました。
それまで学生生活で自主的に何か真剣にしたことなんかなくて、このCGアニメを作っているときだって、作るのが楽しかったのは8割、偉い人が動き出したから仕方なくメンツを潰すわけにもいかないしな、という気持ちも2割ほど混ざっていました。手を動かすのは好きでしたが、自分で何かを考えるというのはとても苦手だったので、みなさんがいなければ完成していなかった作品だったと思います。
1,2ヶ月たった後、ただの習作だった動画ファイルが、いつの間にか作品と言えるものに仕上がっていました。出来上がったものはたった30秒のシュールな作品でしたが(ペプ○マンがコカ○ーラを飲んでしまって首を吊るというとても公開できないものです)会場ではかなり受け、DoGAとは別の上映会でも1,2回使ってもらった事があります。
あれを機会に私は物作りの苦しさと、出来上がったときの楽しさを知ることができ、人生の重要なターニングポイントとなりました。その後ゲーム製作にも自主的に動き出し、結果的にはゲーム業界に入るというところまで行き着くことになります。
(思い出話終わり)

今年は20周年記念ということで、大昔のCGソフトすら世の中に無い時代、パソコンすら珍しかった時代の作品の紹介から、画質が商業に匹敵するようになった時代、世間に通用するレベルの作家性が表現できるようになった時代までを振り返るという企画が開かれました。
それを見てて気づいたのですが、私はこのイベントに10年以上も参加してるんですよね。
うわー、年取ったな自分、と思いつつ、今日流された過去の有名作品を見て、「そうそう、この作品ほんとに感動したなー」とか、「あれ、この作品今見ると全然すごくないぞ」とか、ある種の感慨を持って各種作品を眺める事が出来ました。
彼女と彼女の猫」は言うに及ばず、「ONE DAY, SOME GIRL」なんか、X68000で作った作品だと言うのに中身がしっかり作られているから今見ても色あせない。逆に「PROJECT WIVERN」は、当時グラフィッククオリティの高さに異常に興奮したにも関わらず、今やゲーム機の実機画面にも劣る画像にしょんぼりするわけです。
それら個別の作品についてうんぬん言いたいわけではなくて(WIVERNの悪口を言いたいわけでは決して有りません!!)本当に言いたいのは、私が今日感じた様々な感慨というのは、若い人たちには伝わらないのだろうな、ということ。かまたさんがおのおのの作品の当時の立ち位置を非常に上手く伝えておられましたが、どれだけ上手い言葉を並べても、その時受けた心の動きを若い人たちや最近CGアニメコンテストに来場する様になった方々は実感することはないでしょう。そういう意味で、同時代性という概念の大きさを、生まれて初めて実感したような気がします。それはとりもなおさず自分が年齢を重ねてきた、という話に繋がるわけなんだけれど、CG業界の激動の20年の、半分以上を眺めつづけてきた自分は、そして物作りという観点で業界にコミットしてきた自分は、この時間を決して無駄だとは思いません。
自主制作CGアニメーションの世界は現段階では割と成熟の段階に入ってきたかな、と思っています。それは言い換えれば停滞への始まりでもあるわけです。アート方面ではいくらでもやりようはあるでしょうが、エンターテイメント作品として視聴者に驚きを提供するのはとても難しい局面に入ってきています。そういう意味で、これからしばらくは単なるクオリティのパラダイムで進化が続いていくかも知れません。ただのクオリティ、物量の競争であれば商業と勝負して結果は見えていますし、何より私が楽しくない。そんな中、「こう来たか!!」と思わせられるような、自主制作ならではの多様性を感じさせてくれる場を提供する団体として、DoGAのこれからの更なる活躍を心から祈っています。
http://doga.jp/ < PROJECT TEAM DoGAのサイト