ディアスポラ読了

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

数学的概念を把握する唯一の手段は、それをいくつもの異なるコンテクストの中で見、何ダースもの具体例について考え抜き、直観的な結論を強化するメタファーを最低ふたつか三つ見つけることだ。

「おれは生まれる場所をまちがえたんだ。ここが、おれの居場所だ」

「わしに五次元で夢を見させたいのか」
「ときには」

人格が電子化されているという設定を旨く生かして、千年、万年単位の時間の中で同一のキャラクタが運命と戦っています。上手いなあ。
ウルトラスーパーハードSFという宣伝文句がついているそうです、この本。
いやほんとにウルトラスーパーハードです。物理、情報、数学のウンチクが頻繁に語られ、全てを理解しようとしたらほぼ間違いなく挫折するでしょう。
でも途中で気づきました。「あ、これ分からなくても大筋は理解できるじゃん」って。
難しい話はSFに「それらしさ」を付加する味付けのような物だと割り切って、分からないところはすっ飛ばして読めばいいのです。これができるようになってからは非常に楽しめました。逆に言えばそれまでが相当辛かったわけですが。何度読むのを止めようかと思った事か…。
個人的にはワンの絨毯のエピソードがSFちっくで好きですね。難しい理論で人を煙に巻いて、素敵な幻を見せてくれます。
万人にお勧めはできませんが、SFとか数学とかにそれほど抵抗の無い人なら試してみる価値は大いにありです。