明日はヒノキの木になろう
「僕だけかな」
「何が?」
「翌檜なのは!」
「だって、貴方は翌檜でさえも無いじゃあありませんか。翌檜は、一生懸命に檜になろうと思っているでしょう。貴方はなんになろうとも思っていらっしゃらない」
いやあ、ものすごく久しぶりに井上靖の「あすなろ物語」を読んだのでした。読みやすくて意外と艶っぽいことに気付きました。村上春樹の主人公ばりにもてもてじゃないですか。
とまあうがった見方は置いといて、村上春樹を例に出したのはたぶん間違いで、淡々と事実を描写していくだけに見えるのにそれで読み手に何かを残すという、そういう意味では村上春樹と対極にある作風ですね。どっちも好きです。
短くて、読みやすくて、読後にきっと何かが残ります。超お勧め作品です。
「私も翌檜ですわよ」
と言って笑った。
「何になろうと思ったんです?」
「何かに」
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1958/12/02
- メディア: 文庫
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